「父が集めていた銀貨が出てきた」「引き出しに記念の千円銀貨があった」。当店の店頭や郵送査定でいちばん多いご相談は、こうして家にあった銀貨に価値があるのかという質問です。ご自身で集めた方ももちろん多いのですが、実物を持ち込まれる方の多くは「これは何で、いくらくらいのものなのか」を知りたくて来られます。
結論から言うと、銀貨の価値は「銀相場×重さ」でほぼ決まり、それ以上のプレミアムが付くのはごく一部です。額面を上回るものが多い一方で、下回るものもあります。この記事では、記念千円銀貨・海外の流通銀貨・古銭・地金型銀貨のそれぞれについて、当店が査定のときに実際に見ている順番で「いくらになるか」の考え方を解説します。
- 銀貨の価値を決める3つの層(地金価値・希少価値・状態)
- 記念千円銀貨・モルガンダラー・明治一円銀貨・地金型銀貨、それぞれの「いくらになるか」
- 年代によって銀の含有量が違う流通銀貨の見分け方
- 磨く・変色・ミルクスポットで価値はどう変わるか
- 「今後上がりますか」への、専門店としての正直な答え

銀貨の価値は3つの層でできている

どんな銀貨も、価値は下から順に3つの層で考えると整理できます。
| 層 | 中身 | 誰にでもある? |
|---|---|---|
| ① 地金価値 | その日の銀相場 × 含まれる純銀の重さ | すべての銀貨にある土台 |
| ② 希少価値 | 年号・発行枚数・人気で乗るプレミアム | ごく一部の銀貨だけ |
| ③ 状態 | 傷・変色・洗浄跡・付属品の有無で上下する分 | ②がある銀貨ほど大きく効く |
店頭でお客様に最初にお伝えするのも、この順番です。「まず、銀相場×重さでいくらになるか計算しましょう」と話し、そのうえで希少価値が乗るものかどうか、状態と付属品がどうかを見ていきます。
① 地金価値 — 銀相場 × 純銀の重さ
銀価格は毎日動きます。当店が毎朝更新している今日の銀価格で1gの円換算を確認し、銀貨の重さと純度を掛ければ、その日の地金価値が出ます。純度は銀貨の刻印(.999、.925、900など)か発行データで分かります。
計算しやすいように銀1g=300円とした場合の、主な銀貨の地金価値と買取の目安です。買取価格は地金価値そのままではなく、銀貨の種類・状態・その日の相場で幅が出ます。
| 銀貨 | 総重量 | 純度 | 純銀の重さ | 地金価値(300円/gのとき) | 買取の目安 |
|---|---|---|---|---|---|
| 地方自治法60周年 千円銀貨(2008〜) | 31.1g | 99.9% | 31.1g | 約9,300円 | 5,600〜8,400円 |
| 東京オリンピック 千円銀貨(1964) | 20.0g | 92.5% | 18.5g | 約5,600円 | 3,400〜5,000円 |
| 長野オリンピック 五千円銀貨(1997〜98) | 15.0g | 92.5% | 13.9g | 約4,200円 | 2,500〜3,800円 |
| 天皇陛下御在位60年 一万円銀貨(1986) | 20.0g | 99.9% | 20.0g | 約6,000円(額面1万円を下回る) | 額面で使うほうが有利 |
| メイプルリーフ銀貨・イーグル銀貨など地金型 1オンス | 31.1g | 99.9% | 31.1g | 約9,300円 | 7,400〜8,800円(相場に近い) |
| モルガンダラー(1878〜1921) | 26.7g | 90% | 24.1g | 約7,200円 | 4,300〜6,500円 |
| 明治 一円銀貨 | 26.96g | 90% | 24.3g | 約7,300円 | 4,400〜6,600円 |
| ケネディ ハーフダラー(1964) | 12.5g | 90% | 11.25g | 約3,400円 | 2,000〜3,100円 |
| ケネディ ハーフダラー(1965〜70) | 11.5g | 40% | 4.6g | 約1,400円 | 800〜1,300円 |
※金額はその日の銀価格で変わります(1g 300円は計算用の仮の数字です)。買取の目安は地金価値の6〜9割程度で、地金型や人気の銀貨は高め、記念メダルなどは低めになります。実際の金額は実物を拝見してお伝えします。
大事なのは、この土台はどんなに古くても、多少傷んでいても消えないということです。千円銀貨や五千円銀貨は額面を大きく上回るので、額面どおりに使ってしまうのがいちばんもったいない、と店頭ではよくお話ししています。一方で、一万円銀貨のように銀の量が少なく、地金価値が額面を下回るものもあります。その場合は額面で使うか、額面に近い価格で買うコレクターを探すかになります。
② 種類別に見る「プレミアムが付くのか」
日本の記念銀貨(千円・五千円・一万円)— ほとんどは相場どおり
持ち込みでいちばん多いのがこの記念銀貨です。東京オリンピックの千円、長野の五千円、天皇陛下御在位の一万円、地方自治法60周年の千円カラー銀貨など。お父さまが集めていた、というケースがとても多い。
正直にお伝えすると、記念銀貨のほとんどは地金価値に準じた金額になります。理由は2つあります。ひとつは発行枚数が多いこと。もうひとつは、日本の貨幣は法律で溶かすことが禁じられているため、地金として流通させる出口がなく、よほど人気のあるものでない限りプレミアムが乗りにくいことです。
そのぶん査定で差が出るのは付属品の有無です。造幣局のケース・箱・説明書が揃っているかどうかで、コレクターが買う値段が変わります。「銀貨だけ裸で出てきた」より「箱ごと出てきた」のほうが、同じ銀貨でも高く評価できます。
海外の流通銀貨(モルガンダラー・ケネディ ハーフダラーなど)— 年代で銀の量が違う

アメリカの1ドル銀貨や50セント銀貨は、もともとお金として日常で使われていたコインです。ここが個人的にいちばん面白いところで、当時の人はモルガンダラーで買い物をしていました。ところが銀の価格が上がり、コインを作るコストが額面を超えてしまったため、アメリカは1965年以降、流通コインから銀を抜いていきます。使われなくなった銀貨が、いま額面をはるかに超える価値で取引されている——それが流通銀貨のロマンです。
実務で重要なのは、同じ見た目でも年代によって銀の含有量が違うことです。
| コイン | 年代 | 銀の純度 | ひとこと |
|---|---|---|---|
| モルガンダラー/ピースダラー | 1878〜1935 | 90% | 純銀約24g。年号と造幣所(CC・O・Sなど)の組み合わせで希少価値が大きく変わる |
| ケネディ ハーフダラー | 1964 | 90% | 発行初年のみ90%銀 |
| ケネディ ハーフダラー | 1965〜1970 | 40% | 銀は残っているが半分以下 |
| ケネディ ハーフダラー | 1971〜 | 銀なし | 通常発行は白銅。プルーフの銀版は別 |
| ウォーキングリバティ/フランクリン ハーフダラー | 1916〜1963 | 90% | 純銀約11.25g |
つまり「ケネディの50セントがある」と言われても、1964年なら純銀11g、1970年なら4.6g、1975年なら銀は入っていません。査定ではまず年号を見ます。
プレミアムが付くのは、モルガンダラーならカーソンシティ(CC)造幣所の年号や、ニューオーリンズ(O)・サンフランシスコ(S)の一部の年号など、発行枚数が少なくコレクターの需要が集中する本当に人気のある一部だけです。裏面の鷲の下にある造幣所記号と年号の組み合わせで決まるので、同じ「O」でもよくある年と希少な年があります。それ以外の年号は、状態が良くても地金価値に少し乗る程度、というのが実際のところです。年号ごとの見方は別の記事で詳しくまとめる予定です。
日本の古銭(明治一円銀貨など)— 年号と状態がすべて
明治の一円銀貨(竜一圓)は、日本の銀貨のなかで希少価値が乗りやすい代表です。ただし全部が高いわけではなく、発行枚数の少ない年号と、傷や磨き跡のない状態が揃ったものに限られます。年号が読めれば大まかな見当は付きますが、真贋(当時から偽物が多い銀貨です)と状態の判断は実物を見ないと決められないので、写真を送っていただいたうえで実物拝見、という流れになります。
ついでに、店頭でよくする話をひとつ。江戸時代の小判は、時代が下るにつれて金の含有量がどんどん減っていきました。幕府の財政が苦しくなるたびに、同じ「一両」のまま中身の金を薄くしたからです。アメリカが銀貨から銀を抜いた話とまったく同じ構図で、お金の素材の価値が額面を超えると、素材のほうが薄くなるのは昔から繰り返されてきました。銅の価格が上がり続ければ、十円玉もいつか同じ道をたどるかもしれません。
記念メダル・政治家や式典の記念品 — ほぼ地金価値
「なんとか記念」「有名政治家の肖像入り」といった記念メダルもよく持ち込まれます。造幣局や海外の造幣局が発行した「貨幣」ではなく民間の「メダル」の場合、ほとんどは地金価値です。まず裏面や縁に「SILVER 1000」「純銀」「.999」などの刻印があるかを確認してください。刻印がなく銀メッキだった場合は、残念ながら地金価値も付きません。
地金型銀貨(メイプル・イーグル・ウィーンなど)— 相場に忠実
投資用の地金型銀貨は、価値の考え方がいちばん単純です。相場×1オンスに少しのプレミアムが乗るだけで、年号が古くても新しくても評価はほぼ同じ。詳しくは1オンス銀貨の解説と銀貨の買取ガイドにまとめています。
③ 状態で変わること — 磨く・変色・ミルクスポット

- 磨かないでください。黒ずんだ銀貨を磨くと一見きれいになりますが、表面の細かい線が残り、鑑定では「洗浄(Cleaned)」として通常より低い評価になります。上の写真のように、人気の年号でも「Details」扱いになります。地金価値には影響しませんが、希少価値の部分が削られます
- 変色(トーン)は必ずしもマイナスではありません。自然に付いた色は、コレクターがむしろ好む場合があります。落とそうとしないのが正解です
- ミルクスポット(地金型銀貨に出る白い斑点)は、造幣局の製造工程が原因で、銀の価値には関係ありません。地金型では査定への影響は小さく、鑑定品では評価が分かれます
- 付属品(ケース・箱・証明書)は、記念銀貨と鑑定品で効きます。捨てずに一緒に
「今後、上がりますか?」への正直な答え
店頭で必ず聞かれる質問です。答えは2つに分けています。
地金価値の部分は、銀相場が上がれば上がります。銀相場はこの3年で大きく動いており、記念千円銀貨や地金型銀貨の価値はそのまま連動しています。相場の推移は今日の銀価格のページで3年分のグラフを毎朝更新しています。
希少価値の部分が上がるのは、一部の人気コインだけです。モルガンダラーのCC造幣所の特定年号、明治の希少年号など、以前から人気のあるものは需要が続く限り上がる可能性があります。ただ、家にあった記念銀貨や記念メダルのほとんどは、これから希少価値が乗ることは考えにくく、価値は銀相場しだいです。ここは期待を持たせるより、正直にお伝えするようにしています。
家にあった銀貨を調べる手順
② 刻印を読む:国名・年号・純度(.999/.925/900)・重さの表記
③ 重さを量る(キッチンスケールで十分)
④ ケース・箱・証明書があれば一緒に写す
⑤ 写真を送って概算を聞く
ここまで揃えば、当店では写真から「地金価値だけのものか、希少価値が乗りそうか」の目安をお返しできます。枚数が多い場合や、何のコインか分からない場合も、まとめて写真を送っていただければ大丈夫です。相続や遺品の整理で出てきたものは、相続・遺品コインの整理ガイドもあわせてご覧ください。
よくあるご質問
Q. 記念の千円銀貨はいくらになりますか?
ほとんどは「銀相場×純銀の重さ」に準じた金額です。地方自治法60周年の千円銀貨(純銀31.1g)なら、銀価格が1g 300円のときで約9,300円が地金価値、買取はその6〜9割が目安です。造幣局のケースや箱が揃っていると、その分の評価が加わります。額面を下回る記念銀貨(一万円銀貨など)もあります。
Q. 銀貨を溶かして地金として売れますか?
日本の貨幣(記念銀貨を含む)は法律で損傷や鋳つぶしが禁じられています。溶かさずに、銀貨のまま買取に出すのが正しい方法です。海外の銀貨も、コインのまま売るほうが評価は高くなります。
Q. 黒ずんだ銀貨は磨いてから査定に出したほうがいいですか?
磨かないでください。洗浄跡は鑑定で減点され、希少価値のある銀貨ほど損をします。自然な変色はそのままで査定できます。
Q. モルガンダラーは価値がありますか?
すべてに純銀約24gの地金価値があります。そのうえで、造幣所(CC・O・Sなど)と年号の組み合わせ、状態によって希少価値が乗るものがあります。裏面の鷲の下にある造幣所記号と、表面の年号を写真で送っていただければ目安をお伝えします。
Q. ケネディの50セント銀貨は全部が銀ですか?
1964年は90%銀、1965〜70年は40%銀、1971年以降の通常発行には銀が入っていません。年号で銀の量が変わるので、まず年号をご確認ください。
まとめ
銀貨の価値は「地金価値」という土台の上に、一部だけ「希少価値」が乗り、「状態」で上下します。家にあった銀貨のほとんどは土台の部分、つまり銀相場×重さで決まります。多くは額面を上回りますが、下回るものもあるので、まず計算してみることが大切です。まずは磨かず、写真を撮って、刻印と重さを確かめるところから始めてください。
恵比寿コイン(運営: MKインターナショナル株式会社/東京・恵比寿)
恵比寿の実店舗とオンラインショップで、地金型コイン・記念コイン・古銭の販売と買取を行っている専門店です。記念銀貨から鑑定済みのモルガンダラーまで、店頭と郵送で日々査定しています。記事中の金額はその日の銀相場に基づく目安で、将来の価格を保証するものではありません。


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