ライオンのたてがみに手を添えて、静かに歩く若い女性。「ウナとライオン」は、コインを集める人なら一度は目にしたことのある図柄です。1839年にイギリスで生まれたこのデザインは、「英国で最も美しいコイン」と呼ばれ、180年以上たった今も、世界の造幣局が形を変えて出し続けています。この記事では、ウナとライオンとはどんなコインなのか、原作から2026年の最新版までの流れを、当店で扱ってきた実物の写真と一緒に見ていきます。
- 「ウナ」とは誰で、なぜライオンと一緒にいるのか
- 1839年、ウィリアム・ワイオンが彫った原作のこと
- デザインの3系統:オリジナル、モダン解釈、妖精の女王シリーズ
- ロイヤルミント、オルダニー、セントヘレナ、フォークランド諸島の違い
- このコインで見てほしいところ。「彫り」
- 2026年フォークランド諸島版のこと

ウナとライオンとは:物語から生まれた図柄
「ウナ」は、16世紀のイギリスの詩人エドマンド・スペンサーが書いた長編の叙事詩『妖精の女王(The Faerie Queene)』に登場する乙女です。物語の中でウナは「真実」を表す存在として描かれ、森で出会ったライオンが、彼女の清らかさに打たれて守り手になります。ライオンは力と勇気、そしてイギリスそのものの象徴です。
コインの図柄では、王冠をいただいたウナが王笏を手に、ライオンを導いて歩いています。真実と徳が、力を導く。そう読める構図です。
1839年、ウィリアム・ワイオンの原作
原作は、1839年にイギリスの王立造幣局が作った5ポンド金貨です。彫ったのは、当時の主任彫刻家ウィリアム・ワイオン(William Wyon)。即位したばかりの若いヴィクトリア女王をウナに見立て、女王がイギリスを導く姿として描きました。
この金貨は流通用ではなく、ごく限られた数だけ作られたものです。今では原作そのものを手にする機会はほとんどありません。それでも図柄の美しさは語り継がれ、「英国で最も美しいコイン」と呼ばれるようになりました。ワイオンの名前は、現代の復刻版にも「W.WYON R.A.」として刻まれ続けています。
デザインは3系統:オリジナル・モダン解釈・妖精の女王
ウナとライオンは、21世紀に入っていくつもの国と造幣局から出ています。発行元で分けると分かりにくいのですが、図柄で分けると3つの系統になります。
| 系統 | 発行 | 年 | 主な種類 |
|---|---|---|---|
| オリジナル ワイオンの原画をそのまま再現 |
ロイヤルミント(英国王立造幣局) | 2019年〜 | 偉大なる彫刻家シリーズ第1弾。2オンス プルーフ銀貨(3,000枚)・2オンス プルーフ金貨(225枚)。シルバーバー(1・10・100オンス)、金バー |
| オルダニー | 2019年〜 | 銀貨・金貨(5ソブリン、ダブルソブリンなど)。2024年には1kg金貨 | |
| セントヘレナ | 2019〜2022年 | 5ソブリン金貨(2019年)、地金型銀貨(1・2オンス)、プルーフ銀貨(1・2・5オンス、金メッキ)、金貨 | |
| フォークランド諸島(製造:タワーミント) | 2026年 | 1オンス プルーフ銀貨(500枚)。フォークランド諸島としては初めての発行 | |
| モダン解釈 同じ物語を今の彫刻家が描き直したもの |
セントヘレナ | 2023年 | 座ったウナがライオンのたてがみに手を置く、新しい図柄。銀貨・金貨。チャールズ3世の肖像になった最初の年 |
| セントヘレナ | 2024年 | ウナの顔を大きく描いた「モダン・ウナとライオン」。プルーフ銀貨、金メッキ、1kgの超高浮き彫り・アンティーク仕上げなど | |
| 妖精の女王シリーズ 物語の場面を描く |
セントヘレナ | 2022年〜 | 『妖精の女王』の場面を1枚ずつ描くシリーズ。2022年「ウナと赤十字の騎士」、2024年「ウナとライオン」「赤十字の騎士とドラゴン」など |
※発行枚数や種類は、造幣局の発表と販売店の資料によります。一部の版は資料によって数字が異なります。
オリジナル:いちばん人気が高く、お問い合わせも多い
モダン解釈も人気がありますが、当店で特に人気が高く、お問い合わせも多いのはオリジナルの図柄です。ライオンを従えて歩くウナの姿、ワイオンの名前、ラテン語の銘文。180年以上前のデザインをそのまま手元に置けることが、選ばれる理由だと感じています。



オリジナル系の中でも、原作を作ったロイヤルミントの2019年版は別格です。とくに2オンスの金貨は発行がわずか225枚で、英国のコインオークションでは41,000ポンドで落札された記録があります。人気がひとつの版に集中すると、ここまで値段が動くことがある、という例です。ただし、すべての版がそうなるわけではありません。発行枚数の多い版や、地金型の銀貨は、基本的に銀の相場に沿った値段です。
モダン解釈:同じ物語を、今の彫刻家が描く
2023年からセントヘレナでは、ワイオンの原画ではなく、現代の彫刻家が新しく描いた図柄も出ています。2023年は、座ったウナがライオンのたてがみに手を置く構図。2024年は、ウナの顔を大きく描き、ライオンと花を周りに配した大胆な図柄です。同じ物語でも、ずいぶん印象が違います。


妖精の女王シリーズ:物語の場面を集める
もう1つ、ウナとライオンの元になった叙事詩『妖精の女王』の場面を、1枚ずつコインにしていくシリーズがあります。ウナと赤十字の騎士、赤十字の騎士とドラゴンなど、物語を順に追いながら集める楽しさがあります。
ロイヤルミントの他のシリーズとの関係は、ロイヤルミント(英国王立造幣局)とはの記事でまとめています。
見てほしいのは「彫り」
ウナとライオンを手に取ったら、ぜひ角度を変えながら見てください。このコインのいちばんの見どころは、彫りです。
ライオンのたてがみは一本一本の流れが立体で起きていて、ウナのドレスの襞は布の重さまで感じられます。プルーフ仕上げのものは、鏡のように磨かれた地の上に、つや消しの図柄が浮かび上がります。光の当たり方で、ライオンの表情もウナの横顔も変わって見えます。写真ではどうしても平らに写ってしまう部分です。
オリジナルは、180年前の彫刻家が金属の小さな円の上に彫ったものを、現代の造幣局が技術を尽くして再現したもの。モダン解釈は、同じ物語を今の彫刻家が描き直したものです。どちらも、コインというより、手のひらに乗る彫刻だと思っています。下の写真はモダン解釈の1kg版で、超高浮き彫りの彫りの深さがよく分かります。

どんな方が選んでいるか
当店でウナとライオンを選ばれるのは、コインそのものが好きな方と、デザインが好きな方です。モダン解釈を選ぶ方もいますが、お問い合わせがいちばん多いのはオリジナルの図柄です。
地金型の銀貨は、銀の値段が上がるか下がるかで買う方が多いコインです。ウナとライオンは違います。銀の相場が大きく下がった今年も、新しい版が出るたびに、すぐにお求めいただいています。値段の動きではなく、「この図柄が好きだから」「このシリーズを揃えているから」という理由で選ばれているコインです。
2026年 フォークランド諸島版


2026年版は、フォークランド諸島から初めて発行されるウナとライオンです。ロンドンの造幣会社タワーミントが製造し、ワイオンの原作の構図をそのまま、1オンスのプルーフ銀貨として再現しています。2026年はヴィクトリア女王の没後125年にあたります。
| 発行 | フォークランド諸島(製造:タワーミント、ロンドン) |
|---|---|
| 年 | 2026年 |
| 品位・重さ | 純銀(99.9%)・1オンス(31.1g) |
| 仕上げ | プルーフ |
| 発行枚数 | 500枚 |
| 付属品 | 専用箱・証明書 |
| 当店での販売 | 入荷分は完売しました |
当店に入った2026年版は、ご予約の受付から1週間ほどで、すべてお客様の手元に届くことになりました。ありがとうございました。次の版や、過去の版が入荷したときは、公式LINEでお知らせしています。
店として思うこと
当店では、ウナとライオンの新しい版が出るたびに仕入れてきました。発行枚数が限られているので、当店に入ってくる数もわずかです。だからこそ、このコインを本当に好きな方の手元に届いてほしいと思っています。
棚に並べて眺める方、シリーズを年ごとに揃えている方、初めての1枚としてこの図柄を選ぶ方。どんな理由でも、「好きだから」で選んでいただけるのがいちばんです。
よくあるご質問
Q. ウナとライオンとは何ですか?
A. 1839年にイギリスの王立造幣局の主任彫刻家ウィリアム・ワイオンが彫った5ポンド金貨の図柄です。若いヴィクトリア女王を、叙事詩『妖精の女王』の乙女ウナに見立て、ライオンを導く姿として描いています。「英国で最も美しいコイン」と呼ばれ、現代でも各国の造幣局から復刻版が出ています。
Q. ウナとライオンはロイヤルミントのコインですか?
A. 原作はロイヤルミント(英国王立造幣局)の金貨です。現代の版は、ロイヤルミントのほか、オルダニー、セントヘレナ、フォークランド諸島(タワーミント製造)から出ています。発行元によって図柄や種類が違います。
Q. オリジナルとモダン解釈は何が違いますか?
A. オリジナルは、1839年にウィリアム・ワイオンが彫った原画をそのまま再現したものです。ロイヤルミント、オルダニー、セントヘレナ(2019〜2022年)、フォークランド諸島などから出ています。モダン解釈は、同じ物語を現代の彫刻家が新しく描いたもので、セントヘレナの2023年・2024年版がこれにあたります。当店で特に人気が高いのはオリジナルです。
Q. 地金型とプルーフはどう違いますか?
A. 地金型は銀として持つためのコインで、値段は銀の相場に連動します。プルーフは鏡面仕上げの収集用で、発行枚数が限られ、専用箱と証明書が付きます。同じウナとライオンでも、値段の決まり方が違います。
Q. 2026年フォークランド諸島版は何枚発行されますか?
A. 1オンスのプルーフ銀貨で、発行枚数は500枚です。当店の入荷分は完売しました。次の版や過去の版が入荷したときは、公式LINEでお知らせしています。
Q. 過去のウナとライオンは手に入りますか?
A. 発行済みのものは造幣局での販売が終わっているため、市場に出てくるものを探す形になります。当店でも買取などで入荷したときに販売し、公式LINEでお知らせしています。
Q. 持っているウナとライオンを売れますか?
A. 買い取ります。地金型はその日の銀の相場と重さが基準、プルーフや限定品は箱・証明書の有無と人気を見て査定します。お写真をお送りいただければ概算をお伝えできます。買取ガイドをご覧ください。
まとめ
| ウナとライオンとは | 1839年、ウィリアム・ワイオンが彫った5ポンド金貨の図柄。「英国で最も美しいコイン」 |
|---|---|
| デザインの系統 | オリジナル(ロイヤルミント・オルダニー・セントヘレナ・フォークランド諸島)/モダン解釈(セントヘレナ 2023・2024年)/妖精の女王シリーズ(セントヘレナ 2022年〜) |
| いちばん人気 | オリジナルの図柄。ロイヤルミント2019年の2オンス金貨(225枚)は、オークションで41,000ポンドの記録 |
| 見どころ | 彫り。たてがみとドレスの襞が立体で起きている |
| 選ばれ方 | 相場ではなく、コインとデザインが好きで選ばれている。2026年版も受付から1週間ほどで完売 |
この記事を書いた店舗
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